即興演奏をしていることが多いのですが、その即興を豊かにするためにもいろいろな音楽に触れたいと思って日頃からいろいろ聴いています。その時に背景を調べたりするのも面白いので、せっかくだから文章にしてみようと思いました。いつまで続くか分かりませんがブログに公開していこうと思います。Wikipediaなんかを元にしているので、間違っているところがあればぜひ教えてください。
先日のレッスンで歌いたいという生徒さんがいらっしゃったので、まずはモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス。
Ave Verum Corpus (Mozart k.678)
宗教曲。カトリックで用いられる賛美歌だそうです。
フォーレも作っているらしいです。フォーレのも素敵でしたよ。
モーツァルトは歌詞を少し変えているのですが、こんな感じになっています。
Ave verum corpus natum de Maria Virgine.
めでたし、乙女マリアより生まれ給いしまことのお体よ。
Vere passum immolatum in cruce pro homine:
人々のため犠牲となりて十字架上でまことの苦しみを受け、
cujus latus perforatum unda fluxit et sanguine.
貫かれたその脇腹から血と水を流し給いし方よ。
Esto nobis praegustatum in mortis examine.
我らの臨終の試練をあらかじめ知らせ給え。
作曲時期: 1791年6月17日
編成: 混声四部合唱。ヴァイオリン二部、ヴィオラ、コントラバス、オルガン(通奏低音)。
演奏時間: 約3分。
モーツァルトは1971年の12月5日に亡くなっているので、かなり晩年の作品ですね。
この曲が書かれた頃、モーツァルトの奥さんは病気のため温泉地バーデンで療養していたそうです。モーツァルトは仕事の都合でウィーンを離れることができなかったので、バーデンにいた合唱指揮者アントン・シュトルにいろいろなお世話を頼んでいたらしい。仕事の都合をつけてバーデンに行った時にそのシュトルのために書かれたのがこの曲。
リストによるピアノ編曲や、チャイコフスキーによるオーケストレーションもあります。
小節数は46小節の小品。調性はニ長調。四回転調すると書いてあったのですが、ニ長調→イ長調→ヘ長調→ニ短調→ニ長調ってことですかね。
精妙な転調であるという記述もどこかにありました。最初にニ長調から属調のイ長調にいくのはクラシックの基本形ですが、それから短い間奏を経たあとの部分が精妙なのかな。歌詞でいうと cujus latus のところ。
22小節目は普通にイ長調のI度の和音。その次の小節もAの長三和音ではじまり、1拍目の裏でGdimになります。下属調であるニ長調の属和音が♭9thになっているのかなという感じに聴こえますが、そのあとはニ長調やニ短調に解決するのではなく、ドの♯がニュルッと半音下がってC7onGになってしまいます。その次の小節ではしれっとC7の基本形になってFに解決します。
コード進行でいうと、
|A Gdim C7onG|C7 |F |
という転調。GdimがA7♭9にもみえるしC7♭9にもみえるから移行できるっていうあれ。モーツァルトもさすが上手に使っていたのですね。どちらかというとC7→A7はベタな形ですがこれは逆向きでおしゃれ。ド♯がドに降りた時に抜け感があります。
そのあとの展開は同主短調であるニ短調っぽい展開になっていくのですが、半終止したあとにニ短調ではなくニ長調になる部分がかっこいいですね。歌詞でいうとEsto nobisの部分。そこまでバスが半音で降りながら比較的緊張感のある和音が続いていたあとで裸の長三度。むちゃかっこいい。そのあとの盛り上がりへ行く期待感もあります。
ちなみにこのあとのin mortisという歌詞のところ。合唱がソプラノだけになるのですが、似たような部分が前半のin cruceにもあります。
実はこのin mortisという歌詞は本来mortis inであったのに、モーツァルトが変えているんです。前半と同じような音形を使いたかったからin cruceに合わせて歌詞を変えたのかもしれません。
このin mortis のmoが伸びている場所でソプラノとバスが半音で反行しているのは気分があがります。
あ、冒頭4小節目のリディアン感のあるところも好きです。
なんのまとまりもないけどとりあえずこんなところで。
頭のなかで考えていることを文章にするのはとても大変ですね。たまたまクラシックからはじめてしまいましたが、ジャンルを問わずいろいろな曲をやっていきたいと思います。
オンラインレッスンをやっているので、疑問のある方はお気軽にどうぞ!