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ペトルチアーニとペデルセンによる「オレオ」の演奏について "Oleo" by M. Petrucciani (pinao) & NHOP (bass)

更新日:2021年9月21日



こちらの演奏についていろいろ調べていきたいと思います。


曲は「オレオ」 (Oleo) です。サックス奏者のソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)によって 1954年に書かれたジャズスタンダードです。Miles Davis、John Coltrane、Bill Evans、Herbie Hancock、Joshua Redman、Michael Brecker、Eric Dolphy、Lee Konitz など数え切れないほど多くのジャズミュージシャンによって演奏されてきました。


この曲のコード進行は ジョージ・ガーシュイン(George Gershwin) の「アイ・ガット・リズム」(I Got Rhythm) と同じ進行です。この曲と同じコード進行の曲をまとめてリズムチェンジという事もあります。「リズム」というのは「アイ・ガット・リズム」を指しています。「チェンジ」というのはコード進行の事です。


「オレオ」 の Aセクションは決められたメロディがありますが、Bセクションのメロディは特に決まっていません。Bセクションにはコード進行だけがあります。演奏の時は伴奏だけを演奏したり、誰かが即興で間を埋めたりします。この動画の演奏のBセクションではピアニストが即興演奏をしています。


この動画のピアニストは ミシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)。1962年12月生まれでフランス出身の非常に偉大なジャズピアニストです。1999年1月に36歳の若さで亡くなりました。動画は1994年4月の演奏なので、31歳の時の録音です。


ベーシストは ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン(Niels-Henning Ørsted Pedersen)。省略して NHØP と表記されることが多いです。ペデルセンは1946年5月にデンマークで生まれました。亡くなったのは2005年4月です。生涯で数多くの重要なレコーディングに参加しました。この動画は47歳の時の演奏です。


演奏の内容をみていきましょう。


曲の冒頭 は ピアノのペトルチアーニがテーマのメロディをオクターブで弾きはじめます。少し遅れて ペデルセンもメロディに参加します。


メロディがはじまって少ししてから拍手が来たので、タイトルを言わずいきなり弾き始めたのだと思います。このぐらいのタイミングでどの曲なのか分かって拍手をしたのではないでしょうか?


Bセクションは前述した通り決まったメロディがなく、コード進行だけがあります。この演奏ではペトルチアーニが即興演奏をしています。 以下の楽譜のような感じです。




D7の1小節目は4拍目の♭9th が効いています。 G7の部分はコードトーンを使った素直な音ですね。 C7では ♯11th の音が強調されています。B♭M7+5 のような感じになっていて面白いです。 F7 はビバップのようなフレーズです。F7の2小節目の1拍目に向かって2つの流れが存在しています。これにより 3rd であるラの音が強調されます。

ミ → レ → ド → シ → シ♭ → ラ

ソ → ソ♯ → ラ


(ちなみに、G7の小節の直前の ド ラ♯という音も G7 の 3rd であるシに向かっています。ビバップフレーズでは小節の頭の 3rd に向かうフレーズを作ることがとても多いです。)


F7 の最初のソからフレーズが順番に下がっていきますが、ソの隣のファが飛ばされています。ファが不足している感じがしますが、不足感は F7 のフレーズの最後のファの音により解決されます。


この後テーマのAセクションが続きます。


ソロの冒頭はこのような感じです。


もともとこの部分には違うコードがついていますが、おそらくペトルチアーニには上の楽譜に書いたような感じでコードを単純化してフレーズを作っています。Bb と F7alt が1小節ずつ交代しています。F7alt は、F7 の裏コードである B7 だと考えても良いです。上の楽譜の4段目ではコードチェンジの頻度が上がり、 Bb と F7 が1小節ごとでなく、2拍ごとに交代しています。


(ちなみに、この部分を Bb と B として解釈する演奏はビル・エヴァンス(Bill Evans)の1958年の演奏にもみられます。ペトルチアーニはビル・エヴァンスの影響を強く受けているので関係があるのかもしれません。)


F7alt の部分は全て、Fオルタード・スケールが使われています。ただし、上の楽譜の3段目2小節目にある☆をつけた シb の音は Fオルタード・スケールから外れています。良いアクセントになっています。


ベースのペデルセンは、上の楽譜の奇数小節で レの音、偶数小節で ミb の音を弾いています。ペトルチアーニの解釈と全く一致しているのですが、果たしてこんなことが打ち合わせ無しで出来るのでしょうか。



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