音楽理論って必要でしょうか?
この質問は次の質問と似ていると思います。
「知らない場所へ行くのにスマホって必要ですか?」
スマホが有ったらきっと便利だし、無くても交番で聞いたり地図で調べたり、何かしら目的地へたどり着く方法はあるでしょう。
ただし、メリットとデメリットはあるのではないでしょうか。
【スマホが有るメリット】
・細かい道や、楽なルートを早く調べることができる。
・どこに行けばいいか迷った時のよりどころになる。
・道を人に説明する時にも使える。
【スマホがあるデメリット】
・スマホばかり見ていると、道の途中の美しいものや面白いものを見落としてしまう。
・スマホを見るのが苦手な人にとってはストレスにもなる。
・手がふさがる。
何にでも良いところと悪いところがあります。
音楽理論も似たようなものだと思います。
【音楽理論を勉強するメリット】
・細かい音の使い方や、きれいな響きを早く調べることができる。
・どうしたら良いか迷った時のよりどころになる。
・音楽を人に説明する時にも使える。
【音楽理論を勉強するデメリット】
・理論ばかりに頼っていると、シンプルな美しさやルール外の面白さを聴き逃してしまう。
・理論が苦手な人にとってはストレスにもなる。
・耳がとじる。
最後の「耳がとじる」というものは説明が必要だと思います。
音楽理論というのは、音に名前をつけるものです。ただの響きだったものに、「シーメジャーセブン」とか「トニック」とか「借用」とか、名前をつけます。
しかし人というのは名前をつけると感覚が閉じてしまう事があります。
なんとも言い難い微妙な色の夕焼けに「オレンジ」という名前をはてはめてしまうことで、その微妙な色合いを感じられなくなる時があります。
懐かしい甘い匂いをかいだ時の不思議な気持ちに「バニラ」という名前をはてはめてしまうことで、その気持ちが消えてしまう事もあります。
名前をつけるという行為は、怖いことでもあるのです。
では名前などつけない方が良いのでしょうか?
そうとも限りません。
名前をつけることで感覚が開く場合もあります。
「山吹色」という名前を聞くことで、
今まで単なる黄色だと思っていた色の微妙な美しさに気づくこともあるでしょう。
「蝉時雨」という名前を聞くことで、
騒音にしか感じていなかった蝉の鳴き声の風情に気づくこともあるでしょう。
名前をつけるという行為には、力があります。
すなわち、音楽理論にも力があります。
誰かの感覚を閉ざしてしまうこともあるし、
誰かの感覚を開いていくこともあります。
なんとなく聴いていたコード進行の3つ目のコードがオーギュメントと呼ばれているものだと知った時、その微妙なニュアンスに初めて気づき感動する、というのは十分あり得るのです。